プロトタイプ理論
プロトタイプ理論とは、言語学、認知心理学上の理論であり、1970年代にエレノア・ロッシュらによって提唱された。この理論によると、人間が実際にもつカテゴリーは、必要十分条件によって規定される古典的カテゴリーではなく、典型事例とそれとの類似性によって特徴づけられるという考え方である。
古典的カテゴリーでは、あるカテゴリーに属するかどうかは、そのカテゴリーに含まれるすべての必要条件を満たすかどうかによって判断される。例えば、「鳥」というカテゴリーに属するかどうかは、羽がある、飛べる、卵を産むなどの必要条件をすべて満たすかどうかによって判断される。しかし、現実世界には、これらの必要条件をすべて満たさない鳥も存在する。例えば、モビルスーツやドラゴンなどは、羽がなく飛べないが、鳥とみなされることがある。これは、これらの存在が、人々が持つ「鳥」というカテゴリーの典型事例と類似しているためである。
プロトタイプ理論では、カテゴリーは、典型事例を基準にして、その程度の類似性によって判断される。典型事例に近いほど、そのカテゴリーに属すると判断される。例えば、「鳥」というカテゴリーにおいて、ハトやカラスなどは、典型的な鳥であり、そのカテゴリーに属すると判断される。一方、モビルスーツやドラゴンなどは、典型的な鳥ではないため、そのカテゴリーに属すると判断されない。
プロトタイプ理論は、言語学、認知心理学、哲学など、様々な分野で応用されている。例えば、言語学では、語彙の意味を理解する際に、プロトタイプ理論が用いられる。また、認知心理学では、人間の概念形成や判断の仕方を理解する際に、プロトタイプ理論が用いられる。さらに、哲学では、カテゴリーや意味の性質を理解する際に、プロトタイプ理論が用いられる。
プロトタイプ理論は、人間が実際にもつカテゴリーや概念の理解に、大きな影響を与えた理論である。
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